栄養プロファイリングモデルとは

開発の背景と目的

私たちが日々の生活の中で自然に健康的になれるような「持続可能な食環境づくり」が、いま日本で強く求められています。すでに日本では、食品にどんな栄養成分が含まれているかを示す「栄養成分表示制度」が整えられていますが、それだけでは足りないという声もあります。

海外では、栄養成分表示に加えて、食品の健康度を評価し、わかりやすく区分したり、ランク付けしたりする仕組みである「栄養プロファイリングモデル」が広く活用されています。栄養プロファイリングモデルは、食品に含まれる様々な栄養成分の量を総合的に評価し、健康に配慮した食品をわかりやすく示します。消費者が自分に合った食品を選びやすくなるだけでなく、食品企業がより健康に配慮した食品を開発するきっかけにもなっています。

ところが日本では、海外で活用されているような公的な栄養プロファイリングモデルがまだ整備されていません。海外で使われているモデルの多くは、欧米を中心とした食文化や健康上の課題をもとに開発されているため、日本の食文化や健康課題には合わない部分もあります。

そこで私たちの研究グループでは、日本の食文化や健康課題に合った「日本版栄養プロファイリングモデル」の開発・発展に取り組んでいます

令和5~6年度 厚生労働省厚生労働行政推進調査事業補助金 「日本版栄養プロファイリングモデルの開発(研究代表者:瀧本秀美)」
令和7~9年度 厚生労働省厚生労働行政推進調査事業補助金 「日本版栄養プロファイリングモデルの発展と社会実装に向けた研究(研究代表者:瀧本秀美)」

諸外国で活用されているモデルについて

栄養プロファイリングとは、世界保健機構(WHO)により「疾病の予防や健康増進に関連する理由から、食品をその栄養組成に従って区分したりランク付けしたりする科学」と定義されています。栄養プロファイリングモデルは、栄養プロファイリングを行う具体的な仕組みであり、海外では様々なモデルが活用されています。

ここでは、海外で活用されている代表的な栄養プロファイリングモデルを3つご紹介します。

■Nutri-Score(ニュートリスコア)[出典]

フランスをはじめとしたヨーロッパ諸国で導入されている栄養プロファイリングモデルです。「A〜E」と色分け(緑~赤)で食品の評価を示します。

たとえば、野菜や果物が多く含まれ、食塩や脂肪が少ない食品は「A・緑」、反対に砂糖や食塩が多く含まれる食品は「E・赤」と評価され、健康的な食品のスコアが分かりやすくなります。消費者の選択を助けるだけでなく、企業による食品の改良も促しています。

■Health Star Rating(ヘルス・スター・レーティング)[出典]

オーストラリアやニュージーランドで導入されている栄養プロファイリングモデルです。1〜5つの星で食品の健康度を示すモデルで、星の数が多いほど健康的な食品とされます。

導入によってナトリウム(食塩相当量)などの含有量を減らして健康に配慮した食品が増えるなど、食環境の改善効果が報告されています。

■Keyhole(キーホール)[出典]

スウェーデンなどの北欧諸国で長く使われているシンボルマークです。同じ食品カテゴリーの中で特に健康的な食品を分類し、「鍵穴マーク」で分かりやすく示します。

「鍵穴マーク」の基準は一律ではなく、パンやシリアル、乳製品、チーズ、肉や魚、調理済み食品などの食品カテゴリーごとに決まっており、脂肪や砂糖が少なく、食物繊維や全粒穀物が多い食品が選ばれます。

日本版栄養プロファイリングモデルとは

2024年、私たちは中立・公正な立場から、日本の食文化や栄養課題をふまえて日本版栄養プロファイリングモデル(第1.0版)を開発しました。本モデルは、次の2つのモデルから成り立っています。

■日本版栄養プロファイリングモデル加工食品版(NPM-PFJ)

日本人の食事や栄養素等の摂取に関する基準値をもとに、市販されている加工食品の栄養価を総合的に評価する仕組みです。日本の食文化をふまえた6つの食品カテゴリーに分けてから評価することで、健康に配慮した加工食品を適切に評価できるように工夫されています。健康的な食品開発を後押しします。

単独で摂取しない調味料・香辛料・油脂は、加工食品版ではなく、料理の一部として料理版で評価します。

■日本版栄養プロファイリングモデル料理版(NPM-DJ)

「料理」を1食分単位で評価します。食材の組み合わせや調味料の種類や使用量まで考慮し、日本の多様な料理スタイルに対応した評価が可能です。
このモデルでは、料理として販売している食品(料理)を対象として想定しており、食品メーカーや外食企業にとってより健康的な食品づくりの道しるべになります。

さらに、麺類の「汁を飲む・飲まない」など、実際の食べ方が評価に反映されるため、食べ方の工夫まで含めた情報の発信にも役立ちます。

ベビーフード/乳児向け食品・酒類は加工食品版・料理版ともに対象外
▶ 日本版栄養プロファイリングモデルの詳細については、こちらのページをご覧ください。