日本版栄養プロファイリングモデルの詳細

特徴(全般)

日本版栄養プロファイリングモデル(第1.0版)は、日本の食文化や栄養課題に対応して開発された、食品や料理の栄養価を総合的に評価する仕組みです。日本で市販される加工食品や料理に広く適用可能な栄養プロファイリングモデルとして開発されました。日本を含むアジア諸国では、複数の加工食品を組み合わせた“料理”が食事を構成していることが食文化の特徴といえます。そこで、日本版栄養プロファイリングモデル(第1.0版)では、既存の栄養プロファイリングモデルが対象としている加工食品(麺類、ヨーグルト、果物加工品といった区分)だけでなく、料理(ごはん、煮物、焼き鳥、酢豚、カレーライス等といった区分)を対象とした栄養評価が行えるように加工食品版と料理版の2つを開発しました。

本モデルは、日本における非感染性疾患(NCDs)の増加を踏まえ、健康的な食生活を支援することを目的としています。食品関連事業者の皆様が栄養に配慮した加工食品を開発することを推進し、食卓に並ぶ料理がより健康的なものとなるよう支援します。

日本版栄養プロファイリングモデル(第1.0版)が対象としているのは、18歳以上の日本人です。加工食品や料理に含まれる、エネルギーや飽和脂肪酸・糖類・ナトリウム(食塩)といったなどの過剰摂取を避けるべき成分と、たんぱく質や食物繊維・野菜などの積極的な摂取が望まれる成分の両方の含有量を評価します。加工食品や料理の栄養価は、各成分の多い/少ないに基づいて採点され、最終的に0.5から5.0の10段階でランク付けされます。

本モデルは、透明性を確保するために、公開済みのデータのみを根拠とし、すべての開発工程を開示しています。また、公平性を担保するために、特定の企業等の利害関係者から独立し、公的機関と大学において中立的な立場で開発されました。さらに、実効性を重視し、食品関連事業者による健康に配慮した加工食品や料理の開発や改良に実際に役立つように工夫されています。

「野菜など」とは、果実類、野菜類、種実類、豆類、きのこ類、藻類を指します。

特徴(加工食品)

日本版栄養プロファイリングモデル加工食品版(NPM-PFJ)は、日本で流通している加工食品の栄養価を総合的に評価するために開発されました。日本では、単独での使用よりも、料理の一部として使用されることが多い調味料類や油脂類は、NPM-PFJの対象外であり、日本版栄養プロファイリングモデル料理版(NPM-DJ)で評価します。

NPM-PFJは、オーストラリアとニュージーランド政府が栄養表示制度に導入しているヘルス・スター・レーティング(HSR)を参考とし、栄養摂取に関する日本人向けの基準値(日本人の食事摂取基準等)を考慮して、各加工食品を採点するための基準に改めたものです。この基準を用いて、日本食品標準成分表2020年版(八訂)に収載されている668種類の加工食品を採点し、特徴が類似した6つの食品カテゴリーに分類しました。この食品群内の点数の分布に基づいて、それぞれの加工食品の評価を行う仕組みです。

NPM-PFJは、加工食品の総合的な栄養価を可視化するツールであり、日本の食文化や栄養政策に適合したものとなっています。例えば、HSRでは、保存上の理由等により自ずと食塩含有量が高くなる野菜漬物や魚介類の塩辛といった加工食品は、食塩の量を減らす工夫をしても概ね評価が低くなります。一方、NPM-PFJでは、これらを他の加工食品とは異なる食品カテゴリーに分けてから評価するため、食塩の量を減らす工夫が評価されやすくなります。このことで、食品関連事業者の工夫次第でより評価の高い加工食品を開発することが可能となります。

特徴(料理)

日本版栄養プロファイリングモデル料理版(NPM-DJ)は、加工食品版を料理に適用できるモデルに拡張したものです。

NMP-DJでは、「食事バランスガイド」に掲載されている105種類の料理を対象とし、料理を主食、副菜、主菜、複合料理(副菜と主菜で構成する料理)、主食付き複合料理の料理カテゴリーに分類した上で、各料理カテゴリーの最終スコアの分布を評価することで、5つの料理カテゴリー内での料理を差別化しています。

NMP-DJは、単独では摂取しない調味料(みそ、しょうゆ等)や調理油等も含め、食品を組み合わせた“料理”として包括的に評価できることが大きな特長です。これにより、既存の栄養プロファイリングモデルでは概ね低評価となる調味料や調理油等は、他の食品との組合せにより包括的な評価に組み込むことができました。

さらに、食べ方の違いによる料理の評価にも活用することが可能となっており、例えば、麺類の汁をすべて残した場合は、汁を全部摂取したときよりも高評価となる仕組みとなっています。このように、麺類の汁からの食塩摂取量の影響を具体的に示すこと等で、より健康に配慮した食べ方も評価できることが特徴です。

評価の仕組み(第1.0版)

評価の仕組み
1
食品に含まれる栄養成分等の量(熱量・飽和脂肪酸・糖類・ナトリウム・野菜等・たんぱく質・食物繊維)に関するデータを準備
  • 加工食品版については、熱量・飽和脂肪酸・糖類・ナトリウム・たんぱく質・食物繊維の量は栄養成分表示を行う際の値と同じです。
    • 100 g当たり(液状の加工食品については100 ml当たり)の量を準備します。
  • 料理版については、熱量・飽和脂肪酸・糖類・ナトリウム・たんぱく質・食物繊維の量を料理の栄養価計算により算出します。
    • 1料理当たりの量を準備します。
  • 野菜等(野菜類・果実類・種実類・豆類・きのこ類・藻類)については、全体重量に占める割合を準備します。
2
準備した栄養成分等に関するデータから、食品の栄養価を総合的に反映した最終スコアを計算
  • 各栄養成分等の量を、日本人向けの基準値(日本人の食事摂取基準等)が基となったスコア表を用いて採点し、それぞれスコア化します。
  • 過剰摂取を避けるべき成分(エネルギー・飽和脂肪酸・糖類・ナトリウム)のスコアをプラスで、積極的な摂取が望まれる成分(野菜等・たんぱく質・食物繊維)はマイナスで集計し、最終スコアを算出します。
  • 最終スコアは、食品の総合的な栄養価を反映した数値です。
    • 最終スコアが高い食品ほど、制限栄養素が多く、推奨栄養素が少ない傾向にあります。
    • 逆に、最終スコアが低い食品ほど、制限栄養素が少なく、推奨栄養素が多い傾向にあります。
3
最終スコアに基づき、食品を5.0(健康的) ~ 0.5(非健康的)の10段階にランク付け
  • 加工食品版については、栄養学的な特徴に基づいた6つの食品カテゴリーに分けてから、それぞれで最終スコアをランク付けします。
  • 料理版については、5つの食品カテゴリーに分けてから、それぞれで最終スコアをランク付けします。
  • 日本版栄養プロファイリングモデルで付けられたランクは、栄養学的な特徴が類似した同じ食品カテゴリーに分類される他の食品と比較した際の最終スコアの位置を示します。
    • 最終スコアを小さいものから並べて、0~10パーセントの位置にあるのがランク5.0、10~20パーセントがランク4.5、…、90~100パーセントがランク0.5です。
加工食品版の食品カテゴリー
1. その他
2. 大豆・種実加工品
3. 畜肉加工品・チーズ・粉ミルク・洋菓子等
4. 乾麺・野菜漬物・魚介(乾物・塩辛)等
5. いも・野菜・果物・きのこ・藻類加工品等
6. ドライフルーツ・ジャム・和菓子・飴等
料理版の食品カテゴリー
1. 主食
2. 副菜
3. 主菜
4. 複合料理
5. 主食付複合料理
4
健康に配慮した食品の開発に活用
  • 得らえたランクは、健康に配慮した加工食品や料理の開発を科学的・客観的に行うために活用されます。

評価例(第1.0版)

■加工食品版 評価例①|食パン

栄養成分等 含有量 スコア
エネルギー 250 kcal/100 g +3
飽和脂肪酸 1.50 g/100 g +2
糖類 5.3 g/100 g +2
ナトリウム 472 mg/100 g +4
野菜等 0 % -0
たんぱく質 8.9 g/100 g -3
食物繊維 4.2 g/100 g -5
最終スコア
=+3+2+2+4-0-3-5
=+3

食品カテゴリー=1[その他]

ランク=3.0
  • ナトリウムの量を394 mgに低減することで、最終スコアが2となり、ランクを3.5に高めることができる。

■加工食品版 評価例②|みかん50 %果汁入りジュース

栄養成分等 含有量 スコア
エネルギー 59 kcal/100 g +0
飽和脂肪酸 0.00 g/100 g +0
糖類 14.0 g/100 g +6
ナトリウム 1 mg/100 g +0
野菜等 50 % -1
たんぱく質 0.2 g/100 g -0
食物繊維 0.1 g/100 g -0
最終スコア
=+0+0+6+0-1-0-0
=+5

食品カテゴリー=1[その他]

ランク=2.0
  • 糖類の量を12.0 gに低減することで、最終スコアが4となり、ランクを2.5に高めることができる。

■料理版 評価例①|かけうどん(汁全量摂取)

栄養成分等 含有量 スコア
エネルギー 371 kcal/料理 +4
飽和脂肪酸 0.3 g/料理 +0
糖類 8.0 g/料理 +3
ナトリウム 1831 mg/料理 +17
野菜等 2.8 % -0
たんぱく質 10.8 g/料理 -0
食物繊維 3.9 g/料理 -5
最終スコア
=+4+0+3+17-0-0-5
=+5

食品カテゴリー=1[主食]

ランク=1.0

■料理版 評価例②|ひじき煮

栄養成分等 含有量 スコア
エネルギー 54 kcal/料理 +0
飽和脂肪酸 0.24 g/料理 +0
糖類 3.8 g/料理 +1
ナトリウム 398 mg/料理 +3
野菜等 83 % -5
たんぱく質 2.7 g/料理 -0
食物繊維 4.2 g/料理 -5
最終スコア
=+0+0+1+3-5-0-5
=+6

食品カテゴリー=2[副菜]

ランク=4.5