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食事摂取基準は政府の食事ガイドにどのように使われているか?
食事摂取基準とは、人々の健康を守るためにどれくらいの栄養を摂ったらよいのかを数値で示したものです。これは最新の科学的根拠をもとに5年ごとの改定がなされています。管理栄養士・栄養士が献立(メニュー)を考えるときや栄養指導に使われることが多いですが、一般の人に向けた食事ガイド(例:食事バランスガイド)の資料として利用されることもあります。 この研究では、政府の食事ガイドが、いつの食事摂取基準を、どのように用いているかを調べました。
研究方法の概要 管理栄養士国家試験出題基準などを参考に、インターネットを用いて検索しました(調査日:2012年5月~6月)。 食事ガイドの抽出基準は、健康な人および集団を対象とし、政府が作成、食事またはエネルギー・栄養素の摂取に関することが書かれているものです。
結果 表1のように、12種類の食事指針・ガイドが見つかりました。これらのうち、食事ガイドが作られた当時の食事摂取基準(栄養所要量)を使用しているものが10種類ありました。食事バランスガイドを除いて、ほとんどのガイドは食事摂取基準が改定されても見直しがなされていないことがわかります。また、食事摂取基準には目的によって指標(推定平均必要量、推奨量、目安量、耐容上限量、目標量)が設定されています。これらのうち、どの指標を使用して数値を決定したか書かれていたのは、学校給食実施基準のみという結果でした。
この研究から考えられること 最新の食事摂取基準に基づいて食事ガイドが見直されないことは、情報の根拠が不十分になる可能性があります。また、食事ガイドで具体的に値を示す場合、どのような目的で設定された値か、食事摂取基準の指標が書かれていなければ、数値を正しく活用できないかもしれません。このような観点から、食事摂取基準の改定に伴う食事ガイドの見直しをすること・活用した食事摂取基準の指標を示すことが望ましいと考えます。
表1 政府が策定した食事指針・ガイドにおける食事摂取基準の活用状況
本研究の論文
孫田 みなみ, 笠岡(坪山) 宜代, 瀧沢 あす香, 坪田(宇津木) 恵, 今井 絵理, 岡 純. 政府が策定する食事指針・ガイドにおける食事摂取基準の活用状況. 栄養学雑誌,2013;71(1):56-63.