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東日本大震災の避難所における栄養バランスの評価と、おかず提供の有用性について
東日本大震災において、厚生労働省はエネルギーと栄養素(たんぱく質、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC)の参照量を示しました。これは、長期化する避難所生活で栄養バランスのとれた適切な量を安定的に確保することが目的でした。 本研究は、東日本大震災から約1か月後の避難所の食事が、参照量をどの程度満たしていたか評価するとともに、栄養バランスを改善する要因を見つけることを目的としました。
研究方法 被災県内避難所(n=386)を対象とした「避難所食事状況・栄養関連ニーズ調査」の結果を二次利用し、再解析しました。エネルギー・栄養素提供量を、栄養の参照量に基づいてスコア化を行いました。エネルギーとたんぱく質は、参照量を満たした場合それぞれ1点、ビタミン(B1、B2、C)においては、栄養の参照量を満たした場合それぞれ1/3点を与え、栄養スコア(0~3点)として算出しました。
結果 参照量をすべて満たした避難所(栄養スコア:3点満点)は、1か所もありませんでした。また、栄養の参照量を1つも満たしていなかった避難所(栄養スコア:0点)が、約半数に及びました。栄養バランスを改善する要因を検討したところ、おかずにあたる主菜または副菜のどちらか一方でも提供する回数が0回の避難所と比べて3回の避難所では、栄養スコアが有意に高かった。
この研究から考えられること 東日本大震災における避難所の食事は、発災から1か月が経過しても、栄養バランスに偏りがあったことがわかりました。また、栄養バランスの改善要因として、おかずの種類を選ばずとも何らかのおかずを提供することが有用であることが示唆されました。
本研究の論文
原田萌香、笠岡(坪山)宜代、瀧沢あす香、瀧本秀美、岡純. 東日本大震災避難所における栄養バランスの評価と改善要因の探索―おかず提供の有用性について― Japanese Journal of Disaster Medicine. 2017;22(1):17-23.