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熊本地震で母子が食・栄養・健康で困っていたことは?
概要 災害時の食事が健康に大きく影響することや、災害時要配慮者でもある乳幼児や母親の食事や栄養に課題があることはこれまでの研究によって明らかとなってきました。 しかし、2016年に発生した熊本地震における食事や栄養の課題は明らかとなっていませんでした。 そこで、本研究では、熊本地震発生時に母子の栄養支援を担当する行政栄養士・保育所栄養士、小中学生とかかわりのある学校栄養職員へのフォーカスグループインタビューを実施し、その発言内容をもとに質的記述的分析を行いました。発言内容をコード化し、似たような発言をまとめてカテゴリーを作るという調査方法です。 その結果、被害の甚大な市町村と、その周辺地域では、発災初期及び中長期において異なる課題があることがわかりました。 具体的には、被害状況の異なる地域で共通していたのは,急性期では乳幼児のミルク,アレルゲン除去食,離乳食等の食事が大変だったこと、中長期では子どもの肥満増加でした。一方で、食べ慣れた食事が安心することは被害の甚大な地域でのみ急性期に多く語られました。不安による子どもの食欲不振は周辺地域の中長期の事柄として語られました。 本研究において母子に関して語られた発災初期および中長期の食・栄養・健康に関する課題は、時期や地域によって共通する課題と異なる課題があったことから、災害後の母子の健康を守るためには、個々の状況に適した対応が重要であることが示唆されました。
本研究の論文
濱田真里、 笠岡(坪山)宜代. 熊本地震における母子の食・栄養・健康に関する栄養士へのインタビューの質的分析. 小児保健研究. 2020;79(5):431-441.