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熊本地震後の長引く母子の健康、食および栄養問題: 栄養士へのインタビューの共起ネットワーク分析
概要 災害時の健康問題を軽減するには食事が重要です。特に災害時要配慮者は、食生活の変化が健康に大きく影響します。災害時における食生活に関する報告は少ない状況です。本研究では、熊本地震における発災初期および中長期における母子の食・栄養・健康に関する課題および実態を明らかにすることを目的とし、フォーカスグループインタビュー(FGI)を実施しました。質的な解析ではなく、熊本地震後の母子の食・栄養・健康問題について客観的に分析することを試みました。
研究方法 フォーカスグループインタビューからの自動コンピューター定量分析を使用して、熊本地震後の母子の健康、食、栄養に関する問題を調査しました。 対象は、熊本地震の被災地域において、被災地の乳児の栄養支援を担当する栄養士13名とし、さらに被害の甚大な地域とその周辺地域を選定しました。FGIは2019年11~12月にかけて実施しました。インタビューの内容をテキストに変換し、名詞のみを抽出し、共起ネットワーク分析を行いました。分析ソフトとしてKH coderを用いました。
結果 甚大な被害を受けた地域では、急性期だけでなく中長期的にも衛生上の問題がありました。 「アレルギー」は、急性期や中長期に周辺地域で抽出されましたが、深刻な被害を受けた地域では急性期の問題として抽出されませんでした。 周辺地域では、中長期的に健康と食生活の質に問題が移っています。この客観的な分析は、災害後の母子の食の問題が中長期的な段階でも起こったことを示しました。
本研究の論文
Nobuyo Tsuboyama-Kasaoka, Mari Hamada, Kae Ohnishi, Sakiko Ueda, Yukako Ito, Hisae Nakatani, Noriko Sudo and Ritsuna Noguchi. Prolonged Maternal and Child Health, Food and Nutrition Problems after the Kumamoto Earthquake: Semantic Network Analysis of Interviews with Dietitians. . Int. J. Environ. Res. Public Health 2021, 18, 2309. doi:https://doi.org/10.3390/ijerph18052309