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東日本大震災被災者における被災後7年間の乳製品の摂取頻度と高血圧新規発症リスク
概要 自然災害の被災者は、循環器疾患や高血圧のリスクが高く、災害の規模が大きいほど被災による健康への悪影響が長期間継続することがわかってきました。 しかしこれらの疾患を予防する食生活についての報告はほとんどありません。 そこで本研究では、東日本大震災被災者大規模コホートの参加者を対象として、被災後7年間の高血圧新規発症リスクと乳製品摂取との関連を縦断的に検討しました。
方法 岩手県の東日本大震災被災者大規模コホート調査RIAS研究のベースライン調査に参加した18歳以上の男女約1万人のうち、初年度(2011年度)調査時に高血圧ではなく、 追跡調査に参加した4475人(平均年齢57.2歳、女性割合65.5%)を対象として、被災後約7年間の高血圧新規発症リスクと乳製品の摂取頻度の関連について、交絡要因を調整したCox比例ハザードモデルを用いて検討しました。
結果 7年間の追跡期間中、1554人が新たに高血圧を発症しました。 高血圧新規発症のハザード比は乳製品の摂取頻度が高いほど低く、性別、初年度調査時の年齢、心代謝疾患因子、生活習慣、被災後の住居形態別にみても変わりませんでした。
この研究から考えられること
被災後7年間の追跡調査に参加した東日本大震災被災者大規模コホート調査RIAS研究の参加者において、乳製品の摂取頻度が高いほど高血圧新規発症ハザード比が低く、この関連は種々の関連要因別にみても一貫していました。
乳製品の摂取は、高血圧のリスクが高い大規模自然災害の被災者において、修正可能かつ簡便で有効な予防因子となる可能性が示唆されました。
本研究の論文
Miyagawa N, Tsubota-Utsugi M, Tsuboyama-Kasaoka N, Nishi N, Shimoda H, Sakata K, Ogawa A, Kobayashi S. Seven-year incidence of new-onset hypertension by frequency of dairy intake among survivors of the Great East Japan Earthquake. Hypertens Res. 2022 May 20. doi: 10.1038/s41440-022-00933-0. Online ahead of print.