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東日本大震災被災者における住居別の高血圧有病率と乳製品摂取の関連:RIAS研究
概要 大規模な自然災害の被災者では循環器疾患や高血圧のリスクが高くなることがわかってきましたが、これらの疾患を予防する食生活についての報告はまだ少ない現状にあります。 そこで本研究では、東日本大震災被災者大規模コホートの参加者を対象として、高血圧の有病率と乳製品の摂取頻度の関連を調査時点の住居別に横断的に検討しました。
方法 岩手県の東日本大震災被災者大規模コホート調査RIAS研究の初年度(2011年度)調査に参加した18歳以上の男女9569人(平均年齢61.0歳、女性割合61.2%)を対象として、 震災約半年後の高血圧の有無と乳製品の摂取頻度の関連について、交絡要因を調整したロジスティック回帰分析を用いて調査時点の住居別に検討しました。 調査時点での仮設住宅および避難所居住者を仮設住宅居住者、それ以外を非仮設住宅居住者としました。
結果 高血圧有病者割合は、仮設住宅居住者43.8%、非仮設住宅居住者44.7%と差はありませんでした。 高血圧の有病オッズ比は住居形態に関わらず乳製品の摂取頻度が高いほど低く、この関連は、仮設住宅居住者において強くみられました。
この研究から考えられること
震災半年後の東日本大震災被災者大規模コホート調査RIAS研究の参加者において、
乳製品の摂取頻度が高いほど高血圧有病オッズ比が低く、この関連は仮設住宅・避難所の居住者で強くみられました。
高血圧のリスクが高い大規模自然災害の被災者において、乳製品の摂取量を増やすことが高血圧予防に役立つ可能性が示唆されました。
本研究の論文
Miyagawa N, Tsuboyama-Kasaoka N, Nishi N, Tsubota-Utsugi M, Shimoda H, Sakata K, Ogawa A, Kobayashi S. Association between the prevalence of hypertension and dairy consumption by housing type among survivors of the Great East Japan Earthquake. J Hum Hypertens. 2022 Mar;36(3):299-307. doi: 10.1038/s41371-021-00500-z. Epub 2021 Mar 2.