1型糖尿病に対する皮下血管新生促進技術を応用した「バイオ人工膵島」移植治療の開発
事業責任者
国立大学法人神戸大学大学院医学研究科肝胆膵外科学分野 教授 福本 巧
開発テーマの概要:
膵島移植は、血糖値を安定させ、回復に他者の援助を必要とする低血糖と定義される重症低血糖を予防できるβ細胞補充療法と位置付けられている。同種膵島移植は、2020年に1型糖尿病の根本的治療として保険収載されたが、臓器提供者不足、免疫抑制剤の不可欠性や追加移植の必要性といった問題により、医療ニーズに対し普遍的治療法として充足するには限界がある。これらの問題を解決するために考案された移植法が、医療用ブタ膵臓から分離された膵島を免疫隔離カプセルに包埋し、腹腔内に移植する「バイオ人工膵島」移植である。海外で実施された臨床治験では、その有効性が認められた一方、インスリン離脱症例が少ないことから、我々は、グラフトへの血流改善により、さらなる有効性の向上を目指している。 本開発事業の最終目的は、新規血管新生促進剤を併用することによって「バイオ人工膵島」を皮下埋込み型コンビネーション製品として開発し、低侵襲で持続可能な膵島移植を確立することである。
現在の開発状況:
1. 医療用ブタからの膵島分離の確立
医療用ブタからの膵島分離は、国立国際医療研究センターに設置されているGMP基準に準じた細胞加工施設で行い、これらのプロトコルは完成している。
2. 免疫隔離カプセルのセットアップと特性解析
バイオ人工膵島において、①膜の不安定性、②膜内の栄養不足、③コーティング剤による線維化、といった問題が指摘されている。これらの問題を解決するため、カプセル素材やカプセル作製方法の改良に着手している。
3. 新規血管新生促進剤とカプセル化膵島との適合性評価
神戸大学で開発された新規血管新生促進剤と最適化されたバイオ人工膵島を糖尿病マウス・ブタの皮下に移植し、安全性および有効性を評価する。
実施計画と工程表:
補助事業での実施項目と実施予定期間
重症低血糖症を伴う65歳以上の1型糖尿病患者10例を対象に、医師主導でFirst in Human 試験を行い有効性と安全性を検証する。再生医療等安全性確保法のもと臨床を開始するにあたり、規制当局との協議を開始する。
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