復帰変異モザイク(Revertant mosaicism)を応用した先天性難治性皮膚疾患に対する自家培養表皮シート療法
事業責任者
北海道大学大学院医学研究科 皮膚科学分野 教授 清水 宏
開発および医師主導治験の概要
(1)実用化予定の医療機器・医療材料・体外診断薬の概要
表皮水疱症は、皮膚の表皮と真皮とを隔てる基底膜構造に先天的な異常をきたすことで、全身の皮膚がわずかな刺激で障害を受け、水疱や潰瘍を作る難治性疾患である。重症例は特定疾患(いわゆる難病)に指定されており、根本的な治療法は非常に少ない。
表皮水疱症は先天的な遺伝子異常によって全身皮膚で水疱を作るが、成人の患者をよく観察すると、時々水疱を作らない正常皮膚の部位が観察される。このような皮膚を採取して解析すると、遺伝子異常が正常化した角化細胞が含まれていることが判明した(復帰変異モザイク)。そこで、重症熱傷に対して臨床応用されている自家培養表皮シート((株)J-TEC、ジェイス®)を復帰変異モザイク皮膚から作成・移植することで、表皮水疱症の改善を目指せると考えた。
(2)事業着手時点の開発状況
事業責任者の施設では2001年に、1例の表皮水疱症患者に対して自家培養表皮シート移植の自主臨床試験を施行した。難治性の潰瘍に対する創閉鎖を目的に、当時は復帰変異モザイクの概念を意識せずに同患者から皮膚を採取、培養して移植した。そうしたところ、移植後13年が経過した現在に至るまで、移植部位では水疱や潰瘍をほとんど形成しなくなった。そこで、患者の同意を得た上で植皮部の皮膚を採取し、また当時使用して凍結保存されていた培養表皮シート由来細胞を解析したところ、どちらも一部の細胞において復帰変異モザイクが証明された。すなわち、本事業のプロトタイプがすでに1例において実証されている。
また、(株)J-TEC主導で2012-2013年に表皮水疱症に対する自家培養表皮シート移植治験が行われた。これは復帰変異モザイクを意識せずに施行されたものであるが、一時的な上皮化が実施症例で認められた。しかしながら、一部の症例では再び潰瘍化を認めるようになった。そこで先行治験をfeasibility試験、本事業をpivotal試験と位置づけ、復帰変異モザイク解析を併用した自家培養表皮シート移植を医師主導治験として実施することとした。
(3)医師主導治験に付随して実施する研究開発・前臨床試験の実施計画
1) テイラーメイドな復帰変異モザイク解析の確立
事業責任者の施設で日常的に施行されている表皮水疱症の診断手技を応用して、大量クローニングを併用したアレル単位の遺伝子変異検索・免疫蛍光抗体法・電子顕微鏡解析による復帰変異モザイク解析を実施・確立する。
2) 次世代シークエンス技術を応用した復帰変異モザイク定量化の検討
復帰変異モザイクは、すべての皮膚細胞で生じているわけではない。そのため、将来的には復帰変異モザイクを生じた遺伝子(細胞)の定量化解析を行うことが望ましい。次世代シークエンス技術を応用することで、手技の簡便化・均一化が期待できる。
(4)医師主導治験の実施計画
平成27年度の医師主導治験開始を目指し、現在はプロトコール内容等についてPMDA相談を継続している。分担研究者の所属する(株)J-TECおよび北海道大学病院臨床研究開発センターと共同して、治験実施に向けた体制作りを進めている。
トップページ「新着情報」欄に表示する画像
研究成果 / イベント / 公募 / お知らせ のいずれかを入力してください。
お知らせ