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国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所

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血友病性関節症に対する自己間葉系細胞移植治療の開発

事業責任者

東京大学医科学研究所附属病院 関節外科 講師 竹谷 英之

開発および臨床研究の概要

1) 血友病とは

先天性の凝固異常症で、国内に約6000人弱しかいない男性におこる病気です。その特徴は関節内出血で、幼少期から出血を起こすために、進行が著しい場合には、関節が破壊されて青年期には歩くことができなくなります。このような出血に対して、凝固因子製剤の投与で発生や進行を遅らせることができる時代になってきました。

2) 血友病性関節症とは

血友病による止血困難状態であるため、関節内出血が繰り返し起こり、関節の軟骨や骨を破壊されます。止血し進行を遅らせるために凝固因子の補充が主に行われています。しかし、関節症に対する治療は人工関節が主体です。現在この治療は平均40歳の患者さんに行われています。

下レントゲンの説明:小学生の患児の膝のレントゲン写真です。膝関節破壊が進行し、すでに立って歩くことができず、車椅子で移動しています。

3)軟骨再生の意義

このような患者さんの破壊された関節軟骨を再生することは、最終的に人工関節を用いることになったとしても、自分の関節で生活できる期間を延長させることができます。さらに先天性の疾患であることから、軟骨再生医療による効果は幼少期から老年期まで幅広い年齢層で適応させることができます。また、健常人と同様に血友病の患者さんでも軟骨細胞の元になる細胞(間葉系幹細胞)が骨髄中にたくさん含まれることが分かり、その細胞を安全に採取して、培養して増やすことも可能になっています。

4) 再生医療の問題点

血友病は止血が難しいため、より低侵襲な治療での再生医療を行うことが求められて います。また治療を受けた後の止血管理も重要になってきます。この問題に対して期待できる改善策を組み合わせることで、より低侵襲な治療法の開発に取り組んでいます。今回、凝固因子による止血管理下、患者さんご自身の骨髄から採取した間葉系幹細胞を移植する「血友病性関節症に対する自己骨髄間葉系幹細胞輸注術」を計画しています。この治療法により、血友病性関節症に対する軟骨再生が期待されています。

5) 実際の治療方法の概要

成人血友病患者さんの膝関節障害を対象として臨床研究を行います。事前にこの治療に合わせて患者さんの骨髄から採取した細胞を培養し、間葉系幹細胞に分化させ、関節内出血で軟骨が破壊されている関節を関節鏡視下に出血しにくい状態に治療(関節鏡視下滑膜切除術)を行った後、培養していた間葉系幹細胞を膝関節内に注入します。注入後は、数週間の安静の後リハビリを開始し、その後の効果や副作用を確認するためにMRIなどの検査を行います。

6) 臨床研究と医師主導治験について

膝関節に対する臨床研究の結果を踏まえて、まずは臨床研究と同様に膝関節を対象とした医師主導治験への移行を検討します。さらに適応関節(その他の関節症好発関節:肘・足関節)や、適応年齢(小児から成人まで)を拡大して臨床治験実施を検討する予定です。また移植する細胞に凝固因子を産生させるように遺伝子を組み込んで出血しにくい関節として再生できないかについても取り組んでいます。

7) 実績報告書

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