■ 24時間思い出し法による各種栄養素摂取量の季節変動
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目的 |
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24時間思い出し法による栄養調査を同一対象者に春・夏・秋・冬の計4回行い、季節間での栄養摂取量の集団平均値の変動及び個人変動がどの程度みられるかを明らかにした。 |
方法 |
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岐阜県T市における35歳以上の住民人口37,000人中から無作為選出した男性300人、女性321人を対象とした。このうち調査の同意を得た195人(31.4%)に対して1992年10月より季節ごと4回にわたり、電話による24時間思い出し法の栄養調査を行った。栄養素等摂取量の算出は、四訂日本食品標準成分表等に基づいた栄養計算評価ソフト(夢ソフト)を用いて算出した。季節別の栄養素の平均値を一元配置分散分析で比較した。また、個人の栄養素に対して4回変動係数を求めた。解析はすべて男女別に行った。 |
結果 |
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季節別の栄養素等摂取量の平均値に有意な差がみられたものは、男女ともに水分、植物性たんぱく質、植物性脂質、カリウム、ビタミンC、ビタミンE、食塩相当量及び男性の脂質、魚介脂質、鉄であった。エネルギーの摂取構成比には季節間の変動は認められず、必要なエネルギーは季節を問わず、平均的に摂取されていた。脂肪酸ではリノール酸、多価・一価の不飽和脂肪酸は季節間に有意な差があった。無機成分、マグネシウムで季節間の変動が認められた。個人ごとの栄養素等摂取量の変動係数をみると、変動係数の平均が50%を超える栄養素としては、男女とも魚介脂質、ビタミンA、ビタミンD、コレステロール、男性の動物性脂質などがあげられた。一方、変動係数の低いものは糖質エネルギー比であった(→表)。 |
結論 |
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本研究において使用した電話インタビューによる栄養調査はまだ日本では信頼性・妥当性が十分に確立しておらず、今後さらに検討が必要である。食事調査の結果からは、3大栄養素(たんぱく質、脂質、糖質)とエネルギーの季節変動は比較的小さく、食事内容の評価の栄養素比率については季節差がみられないことを示した。しかしながら、水分、植物性たんぱく質、植物性脂質、カリウム、ビタミンC、ビタミンE、食塩相当量、不飽和脂肪酸、食物繊維、マグネシウム、についてはその調査に当たって季節変動を考慮する必要性が示唆された。今後は季節変動の要因を食品群別摂取状況と併せて検討したい。 |
出典 |
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栄養学雑誌 1996;54(1):11-18. |
著者、
所属 |
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大脇淳子、高塚直能、川上憲人、清水弘之 |